「暑さ寒さも彼岸まで」、昔の人いいこといってます。ホントだ、朝晩やっと過ごしやすくなりました。日中はまだ暑いけれど、エアコンつけなくても眠れるようになり、(電気代を考えると)精神衛生上にもたいへんよろしいです。猛暑のあいだ、姿をくらましていた野良猫びゃおんも、ここ最近またわが家周辺のパトロールを再開したもよう。いままで、どこにいたんだろう。とっても気になります。
今回はそのこさんの意図せぬファインプレーで、なんとか全員集合がかないました。めでたし。読書会の大黒柱Shenshenの職場環境が変わったそうで、画面越しにも疲労の影がうかがわれました。心配です、疲れをためず、ゆっくり新しい環境に順応して乗り切ってくだされよ。みんな揃っての読書会のありがたみ、しみじみ噛み締めたしだいです。
さて本文。陳宝印が数々の苦難を乗り越え、とうとう谷城に帰ってきました。谷城の美しい星空を見上げて、「他想,行,死在这样的天空下面,也不枉这一场跋涉。」(p.423)と彼は思います。この部分について、「ここまでの辛く長い道のりが無駄ではなかった」と、たんに過去を振り返っているのではなく、「未来についていっている、とも読み取れるのではないか」と仲間の室生さんがいっていたのが印象的でした。不意を突かれた感じです。確かにこの先に待っているのは、命の危険と苦労しかないと陳宝印はわかっているわけですから、彼のこの感慨は覚悟の表明ともいえます。そう踏まえて先を読むと「本来,城破的时候,我就该死。现在,见着了你,死,我也能闭眼了」(p.423)という彼の言葉がますます重く心に沁みました。せつなすぎる。ほんとにもう、なんで戻ってきちゃったんだよ。
次回10月で〈朗霞的西街〉読み終わります(すこし11月に持ち越すかな?)。
次回作は彭瑞高〈逃匿者〉になんとか決まりました。“今日ここで決めとかないと、もう後がない”ということで、追い詰められて決定した感じは、この作品の雰囲気になぜかぴったりです。ハラハラ・ドキドキの連続で、ジェットコースターに乗っているような作品です。手に汗握る展開で、一気に読んでしまいたくなること請け合いです。とかいいつつ、ほぼほぼ内容忘れてしまったので、新鮮な気持ちでまた読みなおします。
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《2022中国年度中篇小说》上・下、引き続き心の赴くままに読んでます。
〈突如来的一切〉田耳(44ページ)……「結婚」を間近に控えた三十男の占文と、ブライダル会社勤務の邱月銘の物語。介添人の手配から招待客の宿泊先の手配まで、結婚式までのさまざまな煩わしい厄介事を、邱月銘が次々と解決していきます。ふたりは小学校時代の同級生で、占文には彼女とその兄とのある思い出が心に引っ掛かっています。花嫁を迎えに行く「接亲」や、結婚式当日のようすが事細かに描かれていて、“結婚”メンドクセー、としきたりの多さにゲンナリしつつも、興味深く読みました。トラブル続きのなか、あんなに苦労してやっと結婚したのに、あぁそれなのに……といった予想通りの展開。ですが、タイトルの〈突如来的一切〉の実体について、あれこれ考えさせられました。
〈马陵道〉胡性能(49ページ)……おもしろいのか、そうでないのか、正直よくわからないのですが、気になる作品でした。ストーリーは江蘇省新沂市を舞台に、影絵人形劇の創始者 丁汝成が失踪するまでの経緯を、3人の視点(若い剪纸师の马冰清、丁汝成の娘 丁蜡梅、無形文化遺産の調査をする「我」)をもとに、組み上げていくといった内容です。過去と現在の時間軸が前後して、なんというか、考え抜かれたテクニカルな作品っぽい印象を受けます。3人の視点で丁汝成の人物像を浮かび上がらせる手法が、胡性能の〈三把刀〉にちょっと似ているかなと思いました。〈马陵道〉は実際の地名でもあり、「馬陵の戦い」(紀元前342年)という史実をモチーフにした芝居のタイトルでもあります。この作品には、芝居のタイトルがとにかくたっくさん出てきます。芝居の内容が登場人物と重なり合ったりするので、理解するための調べ物が大変そうです。日本軍の悪辣さ横暴さ、1930年代当時の暮らしや街の雰囲気が目に浮かんでくるようでした。その一方で、「紫檀木箱」や「马陵道」での神秘的・幻想的なエピソードも織り交ぜられて、作品に独特な雰囲気を感じました。ただ、最後の章のまとめ感が気になったのか、読み終えて微妙な気分になりました。たぶん、難しくてちゃんと読めてないせいだと思います。
〈水落石出〉刘汀(54ページ)……一人っ子政策で人生を翻弄させられた兄弟の物語。計画出産に失敗した両親が、長男の梁为民を養子に出す。そこからいびつな家族関係が形成されます。兄弟の半生を経て、誤解と和解の過程が中国社会の移り変わりを背景に描かれています。とくには戸籍の問題、中関村(中国の秋葉原っぽい場所)の盛衰が興味深かったです。それにしても親の身勝手で、子どもを品物のようにやり取りするのが、どうにも受け入れがたいです。水簾洞という秘密めいた場所のもつ象徴性が、タイトルとよく合っているなと思います。温かみのある読後感でした。
〈集美〉朱朝敏(47ページ)……ちょっとサスペンス味のある三姉妹の話。次女はすでに亡くなっていて、三女は失踪して30年以上音信不通。長女は夫と母親、ふたりの寝たきりの病人を抱えて困っています。そこへ、ある日突然、三女から手紙が届きます。物語は長女の視点で、三女との手紙のやり取りを通して進みます。三女が失踪したわけや、父親の死の真相がじょじょに明かされ、誤解と歩み寄りの過程が描かます。希望の見える読後感で、自然の描写に清々しさを感じます。手紙を運んでくる謎の存在「信使」がとても魅力的です。勇哥もいい味出してます。
前回、严歌苓〈第九个寡妇〉を読んでみます、とうっかり書きましたが、ドラマ「蒼穹の剣」にうつつ抜かしてこれっぽっちも読んでなかったです。忘れたころに感想を書くかもしれませんが、次回作が〈逃匿者〉に決まったことだし、〈第九个寡妇〉は当面、棚上げです。[祥]